「DIY」

今回は最近多くなってきたDIYについて考えていきたいと思います。

DIYとは『Do It Yourself』の略ですが、簡単に訳すと『自分自身でやる』という事になります。
自分自身でやるといっても建築業界では全てを自分でやるという事は、なかなか難しい事だと思います。
中には全て自分でやってしまうツワモノもいますが、安全面や強度、法律的なことを考えると
あまりお勧めはできません。

例えば自然素材を使用した住宅を新築やリフォームする場合に多いDIYは、
珪藻土や漆喰を塗ったり、木部に自然塗料を塗ったりすることがあります。
そこでDIYのメリット、デメリットを考えていきましょう。

まずはメリットについて。
DIYをしたい一番の理由では金銭的なことがあると思います。

たとえば3LDKの100㎡くらいの戸建住宅で一般的に使われているビニールクロスと比較すると、
ビニールクロスは材料と施工費を合わせてざっくり50万円くらいでしょうか。
それに対して珪藻土や漆喰の場合には、種類によって金額の差は大きく違いますが、
ここでは仮に材料費が50万円とします。
そして施工費も下地の種類や仕上げ方によって大きく違いますが、仮に150万円とします。
そうした場合に全体の予算から考えて施工費150万円という金額はとても大きいです。
そこでDIYをおこなって総額を調整することが金銭的なメリットになります。

次に無垢のフローリング等に自然塗料をDIYで塗るメリットです。
無垢のフローリングには木の呼吸を止めない為に浸透性のオイルを塗る事が一般的です。
浸透性のオイルは床拭きの回数やよく歩く場所などで、耐久性は変わりますが、
概ね一~二年で再度オイルを塗る作業が必要になります。
この作業を毎年のように塗装業者さんに依頼することが可能であれば問題ないのですが、
ほとんどの方は金銭的な理由であったり、家の片付けや一日外出できない不便さから難しい事だと思います。
それと木やオイルの事を多少なりとも知っていないと再塗装を依頼するタイミングもわかりません。

そこで新築の時にDIYでオイル塗りをしておくと、再塗装の時にまず木にヤスリをかける必要があるのか、
オイルの塗るタイミングはいつが良いのかなどが自然に感じ取れるようになっていきます。
DIYをしたことで無垢の木がもつ本来の耐久性をずっと維持していくことができるようになります。

次はデメリットについて。
まず珪藻土や漆喰塗りでのデメリットです。
普通は珪藻土や漆喰を塗る作業というのは、左官屋さんが何年も修行して技術を学んでいく作業です。
その作業を一般の方が修行をせずにいきなりやる訳なので、仕上がりに差が出るのは当たり前だと思います。
その仕上がりの差を『味』と感じるか、『失敗』と感じるかで変わってきますが、
その家で何十年も暮らしていくことを考えると、『失敗』と感じる人には
大きなデメリットになると思います。

もともと塗り壁はひび割れや剥がれがありますが、DIYで塗った場合には一度に厚く塗ってしまったり、
混ぜ方が不十分であったりして、プロが塗るよりもひび割れや剥がれといったことが
多くなる可能性が考えられます。

次に一番のデメリットとしては、普段使いなれていない道具でケガをしてしまったり、
脚立の上での作業での転落など、軽いケガではすまないことも考えなければいけません。
こんなことを言ってしまうと、誰もDIYをやりたくなくなってしまったかもしれませんが、
ここで過去にDIYをした人の印象に残っていることを書きたいと思います。

その施主さんの子どもたちが、遊びにきた友達と話をしていて
『僕の家はパパが造ったんだよ!』と誇らしげに友達に言っていたそうです。
施主さんはその言葉を聞いてDIYは楽しい反面かなり疲れて、もうやりたくないと思っていたけど、
子どもたちの話を聞いて『苦労したけどDIYをやって本当に良かった!』
と思ったそうです。
こんなに大変だけど幸せなDIYをすると、家の造りについても詳しくなり、
必要な時に適切なメンテナンスを施していくことが可能になるので、
家を長持ちさせることができるし、自分たちが暮らす家にもとても愛着がわくので、
暮らしていてずっと幸せを感じていくことでしょう。

最後にDIYとは、みなさんが考えているより大変だということ、
ケガ等には十分注意しなければいけないことを理解して楽しんでほしいと思います。
それでも家が完成した時には、今までに感じた事のない感動が待っていると思います。