「そもそも家は必要か?」

家づくりを生業にしている自分が言うのもなんですが、そもそも家という物は人間にとって必要な物でしょうか?
そして家という物は何の為に必要なのでしょうか?
世界を見渡してみても人間が生きていくだけなら、絶対になくてはならない物ではないですよね。

それではなぜ私達日本人は自分の家という物を持ちたがるのでしょうか。
雨風がしのげて普通に生活をするだけなら、わざわざ家を建てなくても賃貸住宅で十分暮らせていけるのに。
何の為に自分の家を持ちたいのか、それは一国一城の主になりたいという気持ちや、
子供達の将来の為に財産として残してあげたいから、
また賃貸住宅にお金を払い続けるならその分をローンで支払った方が後々自分の物になって得だからなど、
さまざまな理由があると思います。

そして家という物は一般的に快適さや頑丈さなどの安心感を売りにしている物がほとんどです。
賃貸住宅ではどうしても生活動線を不便に感じたり、収納がたりない事などの不満を感じてしまいます。
その不満を解消する事を前提にすると一般的な家になる事でしょう。

もちろん不満を取り除く事は最低限必要ですが、それは幸せ感とはちょっと違うと思います。
家に限らずどのような事でもそうですが、便利さを追求していくと味気ない物になっていきます。
しかし幸せ感とは不便な事や、無駄と言われる事の中にこそ存在するのではないでしょうか。
そのような観点で考えると家という物の本質が見えてくる事でしょう。
なぜなら安心感と幸せ感は似ているようでいて本質はまったくの別物です。

例えば現代ではスイッチ一つで温まる暖房がありますが、あえて手間のかかる薪ストーブを使い
寒い朝に早起きして時間をかけて火を起こすという無駄と思われる行動こそが心のゆとり、幸せ感という事です。
そのような不便さや時間の無駄と言われてしまいそうな事こそが自分の家が必要である事の一番大事にすべき部分ではないでしょうか。
このような無駄を楽しむ事こそが今の日本人に必要な家であると心から思います。

バイザシーの読者のみなさんは、一般的な家では味わえない一歩先にある幸せ感を味わえるように、
無駄を楽しみ、不便さも楽しみ、生きていく上で必要のない物をあえて取り入れた
自分の家という物の必要性を感じてみてはいかがでしょうか。