「土間のある暮らし」

土間というと、だいたいの人は田舎の民家や農家の家にある玄関の部分を想像すると思います。
本来の土間とは屋内で靴のままいろいろな物の手入れや作業をする場所でした。
実際に私の田舎では、今でも畑からとってきた野菜の保管場所であったり、
お正月前にはお餅つきの会場であったりします。

そんな大活躍していた土間も現代では靴を脱ぐ場所としての必要最低限の玄関スペースでしかないことが多いと思います。
せっかくこだわりの注文住宅を建てるならば昔の日本人が考えだした本来の『土間』を満喫していきましょう。
ここで『土間』の使い方をいくつか紹介したいと思います。

はじめにガレージのような使い方。
やはり海の近くで暮らす人達にとって忘れてはならないのが塩害です。
塩害から守るために自転車を入れたりバイクを入れたりする使い方。
土地に大きなガレージを作る余裕がない場合には、土間がガレージとして大活躍します。
ガレージのシャッターと違い玄関扉の方が気密性も高いので、思いのほか土間の方が快適だったりします。

次にサーフィンや海あそびのための『土間』。
サーフィンをする人の家づくりの要望でよく言われることは
『海から帰ってきて直接お風呂に入りたい!』と言われます。
お風呂にタイルなどを使う在来浴室ならば室内側、屋外側と出入口を二ヶ所作る事は可能です。
しかし防犯性を考えると躊躇すると思います。

そしてユニットバスの場合は、構造上出入口が二ヶ所作れないということが多いです。
そんな時に活躍するのが『土間』です。
海から帰ってきて外で砂を落としビショビショのままウェットスーツを脱いでも
フローリングを痛める事がないので安心です。
そして、濡れているウェットスーツをそのまま『土間』に干しても、もともと濡れても問題のない場所なので、
水がしたたっていても気兼ねなく乾かすことができます。
さらに、基本的には室内なので冬でも寒さを感じずにゆっくり着替えもできるでしょう。

その他にも友人たちがよく家に遊びに来るような家の場合には、土間にソファーを置いてテレビを設置したりして
リビングのような空間であれば、メインのリビングにいる家族に気兼ねなく友人たちを出迎えることができると思います。
そして遊びに来る側からしても、そのような空間であれば、とても行きやすく感じるのではないでしょうか。

もうお分かりの方もいると思いますが、私が考える『土間』とは『ガレージ』と同じだということです。
さらにひとつガレージ以外の使い道でとても便利なことがあります。
それにはまず最近の分譲地をイメージして下さい。
もともと大きな敷地を何軒かにわけて奥に細長い形の土地、いわゆる『うなぎの寝床』となる土地です。
このような土地の場合には家の横幅はどうしてもいっぱいになってしまうので、
裏庭に行く動線を確保することが難しくなります。

たとえば裏庭で使う物を運びたい時に、家の中のフローリングが貼られている所を通ってしまうと
家の中がよごれるので、どうしよう?
なんて時には家の横の狭い隙間をエアコンの室外機や給湯器と格闘しながら大変な思いをして運ぶことになります。
そんな時には京都の町屋でよく用いられている『通り土間』という空間がいいと思います。
ちょっとややこしい言い方になりますが、『家の中の外』を通って裏庭に行くことができます。
簡単に言うと玄関から靴を履いたまま裏庭に行ける通路のことです。

たとえば家の前にスペースがなくて置けない自転車やバイクなども通り土間を通って裏庭に運ぶことも可能になります。
また、裏庭で植栽やお花を育てるのに必要な道具なども家の中を汚さずに運べることになります。
この他にも土間という空間にはいろいろな使い道がある事と思いますが、どの使い方が正しいということはありません。
その家に暮らす人によってさまざまな使い道がある無限の空間がここでいう『土間』なのです。

一方的に土間のすばらしさを書いてきましたが、ここで『土間は寒いからイヤ!』というネガティブな意見の人の為に。
今は昔と違ってサッシや玄関扉の断熱性も上がり隙間風も少ないので冷気が入ってくることはほとんどありません。
そして土間の下に入れる断熱材や、さらには床暖房なんていう贅沢な方法もあるのでご安心下さい。
それよりも土間だからこそできることをイメージしてみて下さい。
家の中に外を取り込んで、楽しい『土間のある暮らし』を送ってほしいと思います。